ゴルフ・ハイラインの価格(299万円)にトップエンドのディーゼルをブツけてくる当たりに細かい戦術を感じます。300万円くらいのやや高級なクルマを好む「見栄っ張り」な層は日本ではただならぬ「消費力」を持っているので、そこへきっちりとアピールできるクルマになっていると言えます。一方で199万円で横並びの感があるプジョー209やルノー・ルーテシアなどのBセグ輸入モデルに対しては、1.5Lのベースグレードで30万円程度しっかり下まわり、しかもライバルの1.2Lターボよりも静かで高性能な1.5Lの新開発スカイアクティブを載せて対抗しています。
これだけ輸入車への対抗意識が強いと、どうしても国産のライバルにやられてしまうのでは?と気になったりします。どうやらマツダの販売戦略ではフィットとインプレッサは相手にしないというのが決まったのだとか・・・。動力性能を重視して1.6Lエンジンを積んでいるインプレッサの前に価格でも性能でも負けていて、先代アクセラの販売は2012年のインプFMC以降は日本では低迷しました。アクセラを蹴落として、今やインプレッサはスバル躍進のシンボル的な存在になっていますが、それでもあくまで「スバルという前提」での成功であり、トヨタの基準あるいはグローバルな視点では、あくまで「さざ波」に過ぎません。
マツダのマーケティングでは、インプレッサの方向性はあくまで「Cセグスポーティ」という日本では極めて狭いジャンルに単にクラッチを合わせただけの、「カウンター・マーケティング」もしくは「ピンポイント・マーケティング」に過ぎません。この狭い市場でアクセラとインプが互いに意識して潰し合っても両者の「疲弊」しか生まないだろうという判断があるようです。インプレッサとの価格競争に持ち込まれたらきっぱり諦めるしかないと、新型アクセラの研修を終えた営業の方が言っているのが印象的でした。
実はライバルのインプレッサの乗り味は好みの差はあれども、マツダ陣営は「とても勝てるレベルではない」と白旗を上げています。しかしグローバルで見たとき、ハッチバック/セダンのインプレッサは実は行き場を失っていて、日米で年産10万台が捌ければ御の字といったところで、年産35万台を誇るアクセラ/MAZDA3に大きく差をつけられています。といってもグローバルではこの程度は完全に「ドングリの背比べ」に過ぎず、アクセラの2〜3倍を売り上げる「巨人」がCセグにはたくさんいます。
カローラ(トヨタ)・エラントラ(ヒュンダイ)・フォーカス(フォード)・ジェッタ(VW)・クルーズ(GM)・ゴルフ(VW)の6台はいずれも年販売が70万台を超えています。このような状況で50万台を目指すと公言した新型アクセラは当然ながらインプと競っている場合ではないことが解ります。今後数年のうちに、北米・EU・オセアニア・ロシア・東アジアの諸地域ではCセグのプレミアム車市場が形成されるはずです。その市場が本格的に拡大する先端を担うクルマとしてアクセラが設計されているのがよくわかります。果たしてマツダの目論み通りコトがうまく進むでしょうか?