トヨタの普通車シェアが高まった結果、必然的に起こる「地盤沈下」を予期していたかのようです。トヨタがひたすら目指す燃費世界一の普通車は結局のところ軽自動車と同じ「ラーニングコストが安い」という個性しかありません。かつての世界一リッチだった日本の普通車の面影は次々と無くなっていって、「エコカー減税」といった恩恵がなくてもクルマとしての価値が評価される「価値ある普通車」がどんどん姿を消しています。
国産車・輸入車問わず、クルマの作られ方に様々な「留意点」が増えて来たことはとりあえず別の機会に述べることにして、要するに700万円とか1000万円とかするクルマに乗って有頂天になっているのが結構ガチで恥ずかしい時代になってきたのは間違いないです。「お金持ちでも軽自動車に乗る時代」だからこそ軽自動車がここまで景気良く売れるわけです。ホンダはいち早くそのことに気づいてトヨタや日産に先んじて「制圧」に乗り出したわけです。
なんと言っても顧客の大半はお金持ちですから、フルオプションで200万円以上でも次々に売れます。ホンダが同じように軽自動車を扱うマツダやスバルと違う点は、決して軽自動車をコンパクトカーの下のグレードと考えていないことです。ホンダの軽自動車は高級車であり、そのためにミニバン以外の目障りな普通車ラインナップを日本から除いています。フィットならば軽自動車と大きく差がありませんので残しますが、シビックだと軽自動車より明らかに上級なクルマに思われますので、日本には持ってこないわけです。同じディーラーでアクセラやインプレッサをこれ見よがしに売っているマツダ・スバルとは発想が大きく違うようです。
ホンダはすでに「Nbox」と「Nワン」の2種の軽自動車を次々とヒットさせ、スズキとダイハツの2強の間に見事に割って入り、現在では3強を形成しています。さらに新たに「S660」と「Nワゴン」の2種を東京モーターショーに出品してまもなく量販体制に入るようです。
新たに追加される2台は、さらに強烈なモデルになっていて、考えようによってはこの2台を所有してペンション経営でもしながら静かに暮らすのもいいかも? なんてイメージが湧いてくるイマジネーション豊かなクルマなんですよね。ホンダの想像力と言うべきか底知れぬ力を感じます。やはり素晴らしいクルマというのは、所有したときのイメージが鮮明に頭の中に次々にひらめきます。
例えばトヨタ86やマツダアテンザを買ったとしてもどれだけにイメージが湧くでしょうか? もちろんこの2台もそれなりに楽しいオーナーライフを約束してくれるでしょうが、ホンダの軽自動車はそれをも上回るくらいの実力があるのではないかという気がします。「Nワゴン」の後席の居住性や乗降しやすさはアテンザを上回ってしまっているといっても過言ではないです。
ホンダに限らずダイハツやスズキも触発されて素晴らしい新型軽自動車を開発しています。マンションの駐車場の隣りにはスバル・ステラが止まってますが、やはりスバルやマツダ、三菱&日産は軽自動車をやっつけで作っているので(スバルは生産を終えています)、まったく魅力の無い軽しか作れないようです(サンバーがRRだと言っても全然いいと思わないです)。しかしホンダは軽自動車のポテンシャルを完全に信じてクルマを作っているので、その輝きが全然違います。やはりホンダは世界に誇る自動車メーカーだと再認識しました。