こちらも冷やかしなどではなく、仕事を頼みにきたわけなので堂々としていたのですが、それでもなんともいえない緊張感があってそれが意外と心地が良かったです。クルマを買うつもりで堂々とディラーに出掛けて行くときの心境に近いかもしれません。ディーラーではどこもお茶などが出て来て、「どうぞどうぞ」という雰囲気で始まりますが、それでも手練の営業マンはサクっと主導権を取りに来てなかなか窮屈な思いをしたりします。そしてさっさと買うクルマのイメージを固めてしまおうとするのですが、その不自由さもまた心地よかったりします。血液型Aの人なんてさっさと決めてもらったほうが助かるとすら思うのではないでしょうか。
この時計屋もそんな感じでした。1本目のバンド交換希望のセイコーを出すと、「あれ?チタンは置いてないよ〜、今ウチにあるのはスチールしかないよ〜」でた〜!めんどくせ〜商法! さっさと在庫のあるスチールに取っ替えてやるから金置いて帰れと言いたげです。取り寄せになるのが面倒なので「チタンは高いよ?」と軽く揺さぶりをかけてきます。実際はそんな感じの悪い対応ではないですけど、本音が見え隠れしてる気が・・・。
軽くてソーラーパワーで10年経ってもちゃんと動き続けるセイコーの腕時計は20歳から苦楽を共にしたタフな相棒なので、いまさら僅かの金額をケチってスチールを付ける理由なんてありません。迷わず「チタンのヤツにしてください」と即答。しぶしぶカタログが登場して無事にチタンベルトをオーダーできました。残りは最近手に入れたオリエントの腕時計のバンドを調整してもらうことと、欧州メーカーの腕時計の電池交換をしてもらうことで、この2つはさくっと職人的スピーディさで作業してくれ、無事全てのミッションを達成しました。
最終的には日本製時計を愛する気持ちが少しは伝わったようで、次第に時計屋のオヤジも笑顔を見せるようになり、最後はにこやかに談笑してほっこりしました。どことなくマツダのディーラーの居心地の良さに近いものを感じましたね。街の修理屋で気軽に直せる日本製の時計やクルマってとても素晴らしいですよね。「ポルシェよりスバル」「メルセデスよりマツダ」なんて胸張って言える日本はとても良い国だなと改めて思います。