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高性能Dセグセダンは確かに魅力的で所有欲をそそる素晴らしいクルマだ。当然ながらそういうクルマを所有するには、かなりの経済的な対価が必要になる。まあ現実的な選択としていかにコストをかけずに楽しむか?と考えることも必要だ。
15年前ならば、この手のクルマのコストはもう少し低かった。M3は1000万円だったが、これと同等の性能を発揮する日本車がいくつもあった。アリストターボ、セドリック/グロリアターボは現在のEセグではあるが、価格はそこまで高価ではなかった。現在のレクサスIS350よりも確実に安い設定だった。
2000年代の前半で日本メーカーはターボ付セダンの開発は一部のスポーツモデルを除いて「将来性なし」と判断を下して、一般モデルのグレードに採用されることはほぼ無くなった。トヨタ・日産・ホンダの各社は、次世代の高性能かつ高級なセダンのパワーユニットとしてハイブリッドをベースとしたユニットの開発を選択した。
今年中にもホンダがHVのレジェンドを発表して、いよいよトヨタ・日産・ホンダの三者三様の高級車用HVユニットが揃う。トヨタはLS用のV8HVとGSとマジェスタに使われるV6HVの2本立て。日産はシーマ、フーガに加えてスカイラインにも採用されるV6HVに新たにAWDとスポーツハンドリングを実現するシステムを追加してくる。そしてホンダはNSX用に開発されたAWDのV6HVをいよいよ発売する。
この三社の高級車用HVシステムが既存のV6やV8の大排気量NAやターボを使った、高性能Dセグに対してどれほどの競争力を持つのだろうか? レクサスがさらに多様化を進めるならばISにV6HVを積んでも良いだろうし、むしろそこに潜在的なニーズがあることくらいトヨタも承知していることだろう。日本メーカーのV6エンジンは今後の自動車業界を睨む限りは「不良債権」というイメージも確かにあるだろうが、6気筒エンジンが出せるパワーという意味ではその性能は間違いなく世界トップの水準にある。
NAで300ps以上という余裕に加えて150ps程度のモーター出力が加わりシステム馬力は350~400psあたりが落とし所になっている。このシステムにどれだけの正義があるのか? 高性能セダンをどのように定義するかによっても結論は変わってしまう。1000万円の対価として400psのパワーを存分に使うというならば、V6やV8のNAをベースにしているので、ターボ過給よりも素直に高回転域の熱効率が良い部分が使えるのは評価できる。
逆に問題なのはモーターを載せる分だけ重量が増えてしまう点だ。結論を先に言ってしまうと、日本のHVをベースにした高性能セダンは、ライバルのドイツ車が1800kg程度の車重ならば、互角以上の存在と言えるが、どうやらBMW、メルセデス、アウディはそれぞれ熱心に軽量化に取り組んでいて、次期M3は450psを発揮しながら1500kg以下に収まると言われている。これが実現すればGT-Rの初期モデルを凌ぐハイパフォーマンスマシンだ。
新型M3のような過激な設計のスポーツセダンに対して、ラグジュアリーやら静音性やらに神経を尖らせる日本の新型HVは走行性能で太刀打ちすることができるのか? レクサスLS600hはハイエンドなスポーツセダンとして成立するだろうか? しかしそこにはフラッグシップ車の限界というものが存在するだろうし、本気でスポーツセダンを作るならばやはりレクサスISに450hや600hのユニットを載せるのが妥当だろう。
次回に続く
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