マツダが属する「一般ブランド」のDセグ車の販売は、とくに欧州・日本・豪州といった地域で大きな打撃を受けています。プレミアムブランドに対する負い目(コンプレックス)や、コンパクトカーに何かと負けてしまう実用性という板挟みが不調の主な原因でしょうか。そしてそれ以上に各メーカーが自動車ユーザーに「このサイズのクルマを買う意味」をしっかり伝えることが出来ていないことから、低迷のトンネルを抜ける予兆がなかなか見えません。もはやD セグセダンは「プレミアムカー」でなければ売れない!が北米以外の地域では業界の常識になりつつあるようです。
日本における「マツダへの印象」がまさにこれをよく表しています。これまで「非欧州メーカー」というハンデキャップをはね除けるために磨き上げた技術は、マツダ好きにはたまらないものだけども、自動車ユーザーの大部分にはまだまだ認知されていないです。「スカイアクティブ」という言葉自体はかなり一般的になっているようですが、ディーラーの人が言うにはその中身まではまだまだ理解されていないようです。
確かにスポーツカーにおいては一定の評価・実績を得てきましたが、「一般車」におけるマツダの良さを語る声は日本よりも圧倒的に欧州から聞こえてきます。マツダが欧州向けに作ってきたクルマが、かの地で高い評価を受けて日本市場でも歓迎されるようになってきた部分も相当にある気がします。恥ずかしながら私も当初はそんなミーハーの一人ではありました・・・。しかし実際に所有してみて分ったことは、マツダは決して日本での使い勝手を無視していることはないですね。アテンザ、アクセラ、デミオと大きく3グレードに作り分けつつもそれぞれに「日本で走らせる喜び」を常に考えている!とハッキリ感じます(詳細は別の機会に)。
マツダは経営基盤が弱いことから、よく「限りある開発資源の中でアイディア勝負」などと言われています。確かに競合他社と比べてエンジンのバリエーションの少なさは気になります。しかし最近ではどのメーカーを見ても新開発エンジンが従来のエンジンよりも「運転の楽しさ」という基準に於いて明らかに良くなっているという例は極めて少なく、真剣にクルマ作りを考えるメーカーほど、開発費が膨大なエンジンではなく、それ以外の部分に多くの資源を投入するようになっています。トヨタも日産も高級車であればあるほど10年以上前に開発されたエンジンを載せる傾向にあります。結局は高級車がたくさん売れた時代のエンジンを越えるものは簡単には作れないようです。
現実問題として、バブル期に日本の各社が挙って作った高級サルーンで、継続して販売が行われているのは、トヨタ(レクサス)くらいなもので、辛うじて日産、ホンダが北米主体に続けているに過ぎません。この「継続」を考えると、マツダがトヨタ(レクサス)あるいはメルセデスやBMWを超える高級セダンを作ることは「よっぽどのこと」がない限り無理なのは明らかです。やはり「プレミアムブランド」の強みはずっと作り続けてきた実績は大きいです。
そんな絶望的な状況の中から登場してきた3代目アテンザは、マツダの強気な姿勢を代弁するかのように、各国マーケットでは既に上々の評判を得ています。フォード、VW、プジョーの大衆ブランドDセグセダンが大苦戦する中で、新しい時代を切り開くモデルとの期待も高いようです。そんな中で「何となく」シェアを保ってきたメルセデスやBMWもまた転機を迎えているようです。これまでは彼らにとって「Dセグ」は本気を出すクラスではなかったわけですが、大衆ブランドが一斉に崩れたなかで、行き場を失ったニーズは「割高感」しかないプレミアムブランドの「マイルド」なDセグへは向かわなかった現実と真剣に向き合い始めました(ベイビーメルセデスなんて要らん!って)。
リーマンショックによる不況で開発が止まっていたり、後回しにされていた各社のDセグはやはり魅力に乏しいという指摘もありましたし、アルファロメオ159のようにコストに見合わずに急いで「店じまい」してしまうモデルなどもありました。マツダも赤字になってしまうGHアテンザを半年早く撤収し、GJアテンザを急いで展開するほどで、株価を意識した厳しい「綱渡り」な展開でした。
懸命な企業努力で「存続」を保ったマツダはそれでも「地獄の欧州」を目指し続ける。その横でスバルは「最後の楽園北米」でこの世の春を謳歌(スバルの努力を否定するつもりはないです)。まあどこで商売するのも自由なんですけどね。もはや修羅のように「地獄」をかけずり回るマツダが魂を込めて作る新型車は、どれも鬼気迫るものがあります。この前までライバルとして比較されていた「アクセラ」と「インプレッサ」の立ち位置がだいぶ変わってきたと感じるのは気のせいでしょうか?
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