2014年07月01日

オーリス / レクサスCT 進化論

  一見、順風満帆に見える「世界のトヨタ」ですが、そのラインナップを見ると「国内シェア4割」のメーカーにしては地味なモデルしか出せていないジャンルがあります。その1つが「オーリス」が配置されているCセグハッチバックでしょうか。このクラスではトヨタは「プリウス」へ開発資源と生産台数の割当を集中させているようで、欧州向けのコンベンショナルなパッケージに日本で走るトヨタ車らしい味付けがされていて、誤解を恐れずに言うと「苦情が来ない乗り味」になっています。

  もしトヨタに好意的に評価するならば、あの「毛布に包まれたクルマ」とか形容されるトヨタらしい当たりの「まろやかさ」は、アクセラでもゴルフでもなく「日本版オーリス」こそが乗り心地ナンバー1と宣言しても差し支えないほどではあります。ただし自動車評論家に主導された論調の中では、「ダイレクトなドライブ感」に重きが置かれるので、そのど真ん中にいるマツダ車と比べてしまうと「運転の楽しさ」が希薄と感じてしまいます。ただ欧州車やマツダ車が依拠している「ダイレクト感」なんてのも、とても朧げなものです。ユーザー個々のちょっとした「好み」が、ある程度の説得力を持っているメーカーのコンセプトに取込まれたという話に過ぎません。

  最近では「名門欧州メーカー」で次々と導入が進む「可変ダンパー」を見ると、もはや「ダイレクト感」なんて切り口でトヨタを揶揄するのはお門違いも甚だしいと思うのです。可変ダンパーとはトヨタ的な「コンフォート」な乗り味とマツダ的な「ダイレクト」な乗り味をスイッチ一つで切り替えられるという「チキン」な装置です。クルマを自分の力で判断する自信のない人にとっては有り難いことこの上ないようですが、電子制御で作られたヴァーチャルな乗り味に感動するなんてなかなかバカ丸出しだと思いませんか?グランツーリスモでもやってろ・・・って感じです。

  さて話がズレましたが、評論家がフルボッコにするほどにトヨタの乗り味は「つまらない」のか?ってことに話を戻すと、確かにクラウン、マークX、カムリくらいのサイズのクルマに関しては、ある程度は的を得ていると思います。レクサスGSとISの新しいシャシーに別のダンパー機構を組み込んで、わざわざ違う乗り味を作り出していることからも、トヨタが意図的に「つまらなく」している要素はあります。もちろんスポイルされているわけではなくて、クラウンにはこの手の柔らかくて上質な乗り味を好むユーザーが多いからです。

  1500kgを超えるミドル以上のセダンに関しては、「ダイレクト」感を犠牲にしても「乗り心地」を優先している意図が見られますが、1200kg以下の軽量ボディのクルマも得意なトヨタは、自慢の軽量化技術による「軽さ」と「柔らかいアシ」を組み合わせて、なかなか個性的な小型車作っています。まだまだプリウスがメジャーになっていない2000年前後のカローラは、その圧倒的に高いクオリティで世界の頂点に立ちました。いまやそんな輝かしい歴史もVWの太鼓持ち評論家によって「書き換え」が行われていますが・・・。

  オーリスの起源はカローラシリーズとして初めて欧州型ハッチバックになったカローラランクス(アレックス)です。ライバルのシビックの「Vテック」に対抗するために、最終型セリカの上級グレードやロータスエリーゼにも使われたヤマハ製の1.8L自然吸気エンジンを搭載したモデルは、世界のどこにもない個性的なもので、6000回転を超えてもさらに伸びる高回転ユニットです。なんでもかんでもターボで誤魔化す欧州メーカー車なんかよりも断然に気持ちが良いです。ホンダのVテックとこのYAMAHAエンジンこそが、日本のホットハッチの原点だと思うのですが、今ではそんな事実は「なかった」かのように、日本のハッチバックは欧州車に遠く及ばなかった・・・みたいなメチャクチャな論理で語る人が多いです。

  カローラランクスにとって悲劇だったのは、当時のトヨタはお手頃でスポーティなモデルが他にもたくさんあって、200万円台で、「最終型セリカ」も「アルテッツァ」も「MR-S」と3車種がありFF/FR/MRと選びたい放題でした。「ホットハッチ」ということで今後のシーンを担う可能性の高かった「カローラランクスZ」でしたが、あまり注目される存在ではありませんでした。しかもトヨタはスポーツカーのムーブメントからやや離れたところ位置していて、日産、スバル、三菱のスポーツセダンが人気の中心だったこともあり、注目度は極めて低かったです。

  この「Z」というグレードは後継の初代オーリスには引き継がれず、ホットハッチの流れは「高級化」というキーワードとともに「ブレイド」という2.4L(直4)や3.5L(V6)を持つクルマへと分裂していきました。実際トヨタが「ホットハッチ」に力を入れているという印象はあまり無いかもしれませんが、ホンダ、スバル、マツダ以上にこのジャンルに全力投球してきたのはトヨタだったと思います。実際にオーリス/ブレイドで積み重ねた実績が、レクサスCTで結実しプレミアムCセグの先頭を走ることもできました。ブレイドがモデル廃止になって2年ほど経ちますが、そろそろ「ランクスZ」「ブレイド」の系譜を引き継ぐ「ホットハッチ」が必要になってくる頃だと思います。

  しかしオーリスのMCの話題から聞こえてくるのは、新開発の1.2Lターボを搭載するというVWゴルフの廉価モデルに対抗するクルマ作りの話ばかりです。ゴルフに基本設計では全く負けていないオーリスならば、エンジンで優位に立ちさえすれば良いでしょうが、すでにゴルフは北米でも欧州でも「過去のクルマ」として大きなインパクトを残せずに苦しんでいます。例え性能面でゴルフ1.2Lをベンチマークしても、「バイアス」で売れているだけの日本市場を引っくり返すことはできないですし、欧州で戦うエンジンはターボではなくて、BMWから調達したディーゼルが使われることになっています。

  トヨタとしては、一刻も早く「ホットハッチ」を継承するグレードをレクサスCTかオーリスのどちらかに設定し、どちらかのモデルをCセグで最も知名度のあるブランド車種に仕立てることではないかと思います。岡崎宏司という評論家も言ってましたが、新型ハリアーにも採用された2.5LのHVユニットをこのどちらかに積み込むくらいのインパクトがあってもいいのではないか?と思います。そのギャップこそが「ホットハッチ」を本当にホットにするポイントなのではないかと思うのです。


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posted by のっち at 22:59| Comment(0) | トヨタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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