ユーザー側の変化ばかりが注目されてますけども、「作る側」にもそれなりの問題があると思うのです。例えば「機械式腕時計」を選ぶときに、誰でも気にするのが「文字盤のデザイン」や「ムーブメントの美しさ」だったりします。「GS(セイコー)」「IWC」「パネライ」「ゼニス」「ロンジン」など、時計本来の「機械美」を持つブランドに数十万円を投じてしまいたくなるのは、数千円で買える腕時計が見せる「醜悪さ」を一切出さない仕事ぶりに感動できるからです。クルマもやはり同じじゃないかと思うのです。
どこのブランドがというわけではないですが、600万円もするのにデザイン的に重要な部位の質感がどうも腑に落ちない・・・機械としての美しさに欠けている!などがっかりさせられる高級車が実に多いです。パワートレーンだって「並み」のもので、内装も量産モード全開のありきたりな内張りとシート生地、それでも「プレミアムブランド」というだけで結構な価格がする。もう勘弁してくれ〜・・・。一方で200万円のクルマを見ても、やはり価格なりの設計だなとがっかりさせられます。作る側の論理で「目一杯工夫してアイディアを散りばめました」と言われても、明らかに他のメーカーと同じサプライヤーだなと感じるパーツが次々と目に入ってくる・・・。
なにも1台1台ハンドメイドで、絶えず仕様を変えながら生産しろ!なんて無茶なことを言っているわけではなくて、開発者やデザイナーが安易な「パクリ」ではなく、頭をかきかきして考えた痕さえ見れればそれでいいんです。素人でも考えつくような「使い古された」アイディアが目立った瞬間に、このクルマの開発者は妥協したな・・・って感じてしまう。そういうクルマは絶対に失敗する!とは言いませんけども、それで良しとするメーカーの悪い文化はすぐにそのブランドを曇らせるでしょう。なんでVWとアウディの周辺には淀んだ雰囲気があるのか・・・それは例のディーゼルの問題以前に、何も興奮させないフルモデルチェンジを「是」としている判断に問題があるように思います。
まあ何が言いたいかというと、スズキのクルマはなかなか「いい仕事」じゃないの?ってことです。クルマを「買わない」潜在ユーザーと真剣に向き合ってますね。 買わないヤツらを動かすには「感動」させるしかない。 ・・・最近のスズキ車は乗りにいくと少なからずビックリしますね。100万円台のクルマになんでこんなに装備が付けられるんだろう? クルマに詳しくない人でも、とりあえずシートヒーターで迎えられれば・・・いきなり度肝を抜かれますよね。ここはレクサスなの?と錯覚するかも・・・しかもそのシートヒーターが「標準装備」で付いてくると聞いて再びビックリ!!!。新型プリウスや今をときめくマツダの各車だってシートヒーターは限られたグレードにしか付かないです。しかもベースグレードからだとオプションで選べなかったりするので、乗り出しで300万円オーバーするモデルじゃないとシートヒーターはゲットできないです。
スズキは小型車が専門なので、車格によるオーラみたいなものは期待できないですが、その小さな車体の限られた範囲の中とはいえ、デザイナーが目一杯の表現をしようとしているのがいいですね! イグニスに限らず、ハスラーもアルトもソリオも良かった。・・・開発者もデザイナーもそれぞれの仕事を全うしているのが感じられる!それだけに残念だなと思うのが、「スズキ」という何とも垢抜けない社名をそのまま「ブランド名」にしていること。こればっかりはポリシーの問題なので社外の一般人があれこれ口出しすべき事ではないのは重々承知しているのですが、「S」マークというだけで家族から却下されてしまうファンが結構いるのも事実です。
完全に余計なお世話ですが、いっそのこと「カプチーノ」(「ジムニー」でもいいかな)とかいう普通車専門ブランドを立ち上げてみてはどうでしょうか(商標権はあるでしょうから)。"カプチーノ"スイスポ "カプチーノ"キザシ なんだか売り上げがにわかに倍増しそうな響きがしますね・・・。が、しかしホンダ、ベンツ、フェラーリ、ランボルギーニは創業者の名前で続いているのに、なんでスズキだけ変えなきゃいかんの?ナメるなよ!!!と怒られてしまいそうですが・・・。
もしスズキが他とは違う自動車メーカーであることを自認して、ユーザーから所有してよかった!と感謝されるクルマを提供し続ける覚悟があるならば、いち早く「プラットフォーム」戦略に目覚めるのもいいのではないか?という気がします。この10年あまりで日本人の生活の中には、幾多のプラットフォーム・サービスが入り込んできました。例えば「グーグル」「アップル」による情報デバイスの占有だったり、「楽天」や「アマゾン」といった巨大通販サイトへの依存だったりするわけですが、日本人の消費行動がそれらの企業が提供するサービスへと向いたのは、それらが生活の質的向上を保証するコンテンツを提供して、自らのプラットフォームへと集客したからです。
もしスズキが「カプチーノ」というプラットフォームを使って、これまでにないサービスを提供することで、これまでとは全く違う次元の集客を行うことも可能です。例えば・・・浜松近郊にあるスズキの広大な敷地を使ってモータースポーツイベントでも開いてみてはどうでしょうか? 今も86やロードスターのようなスポーツカーではメーカーが後援するワンメークレースが開かれたりしていますが、スズキのテストコースを開放して、"カプチーノ"ブランドのオーナーしか参加できない走行会で、非日常な走りをしてもらうのもいいかもしれません。全国各地に点在するサーキットは、ガチなクルマが多くてハードルが高いと感じている人も多いでしょうから、ビギナーを中心に潜在的な需要は相当にあると思います。走ってるクルマが全部"カプチーノ"車なら気兼ねしないというのもあるかも・・・。
やはりユーザーがブランドに対して忠誠心を持つようになるためには、そのクルマを所有して「人生が変わった」と思えるか?が大事ではないかと・・・。「イグニス」買ってみました!手頃な価格でよく走る・・・という満足感さえ得てもらえばそれでいい!という時代ではなくなってきています。クルマを持つだけで年間50万円くらいのコストがかかるわけですから、後から発生する「毎年50万円」をユーザーが気持ちよく負担できる仕組みを作れるか?がポイントだと思います。カーライフ全体をオーガナイズする「プラットフォーム」ならば、サーキットやクローズド・コースを確保して走行会を開くだけでなく、風光明媚なドライブコースの向こう側に位置する保養地に、なかなかオシャレな宿泊所を建てたり、あるいは一流のサービスを提供できるホテル産業と提携するとか・・・。
すでにレクサスがコンシェルジュ・サービスを通じてこういった内容を主にセレブ向けに展開してますが、誰もがレクサスのこだわる「格」に準じたホテルやレストランを使いたいわけではないです。コンシェルジェ・サービスなんてセレブの為のもの・・・というイメージがこれまではありましたが、これこそがまさしくもの凄い勢いでユーザーを取り込んでいる「プラットフォーム・サービス」の本質ともいえると思います。つまりユーザーのわがままを聞いてくれるサービスです。月に1度でもいいから「わがままを何でも聞いてくれる人」が居てくれたらそれだけで人生はかなり楽しくなりますよね? 「イグニス」が日本で想定しているユーザー層は、「アクティブな若者」だそうですけども、彼らこそまさに「SNS」などのプラットフォーム・ビジネスを散々に使い倒してきた人々ですから、レクサスの顧客などよりも早く「サービス」の価値が浸透すると思うのですけどね・・・。(内容が散らかっていてごめんなさい)
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