もはや「高性能」だけで一般モデルとの価格差を納得させるには、R35GT-Rに匹敵するくらいの「加速性能」が要求されるようになって来ている。インプにしろエボにしろ、設計を改めてさらに高性能化したところで、500psクラスのGT-Rやコルベットとの価格差がほとんど無くなるだけで、果たして「スーパースポーツ」に匹敵する商品力が出せるか?というととても微妙だ(世界中の金持ちがインプやエボに好んで乗るとは思えない)。
最近ではインプとエボの築き上げた「4WD小型スポーツ」というジャンルにメルセデスが乗り込んできて、スバルも三菱も余計に商売がやりにくくなってきた。10年以上に渡って切磋琢磨してきたインプとエボが、いきなり現れた「4MATIC」のメルセデスAMG45に負けるはずはないのだが、メルセデスはより広く「ライトユーザー」にアピールできる強みがあるのは脅威だ。
さらに厄介なことに、マツダがディーゼルターボを使った新型アクセラのスポーツモデルを投入してくるのは、ほぼ確実でマツダが誇る2.2Lクリーンディーゼルターボは現状でも40kg・mの最大トルク(インプWRXと同じ)を誇るので、そのポテンシャルは図り知れない(しかも日本では燃費に関しても圧倒的に経済的だ)。さらに日産やホンダも今後HVをターボ代わりに利用したスポーツモデルを投入する動きを盛んに見せていて、これまで「この世の春」を謳歌していたインプやエボは「革新性」で置いて行かれている感は否めない。
そんなインプとエボはここに来て、揃って「ダウンサイジング」を打ち出してきた。2.0Lターボ→1.6Lターボの移行は、影響力の強いF1のレギュレーション変更に合わせた「便乗作戦」の意味合いも当然考えられる。ホンダもF1参戦のタイミングで「シビックtypeR」を復活させ、F1と同じ排気量の1.6LターボのV-tecエンジンを搭載で日本市場にも投入するという噂もある。これでは次期のインプとエボに「モロ被り」になって競争が激しくなり3台とも共倒れという可能性もある。
スバルも三菱もホンダも従来ではスポーツカーに関しては「走行性能」でしか勝負しない方針を採っていたようだが、スバルはここに来て内装・外装での差別化の動きが見られる。現行モデルを比べると(シビックtypeRは売り切れだが・・・)、インプWRXが内装面では一歩リードしていると言える。ベース車のインプレッサもプレミアムブランドとの競争が避けられない状況ということもあり、現行モデルではレガシィと全く同レベルまで内装が引き上げられている。実際に新型メルセデスAクラスと比べても大きく見劣りはしないくらいだ。
さらに先日発表された、「WRXコンセプト」の外装デザインがスバルブランドのイメージを大きく覆していて、「プレミアムブランドへの脱皮」を強く意図したコンセプトモデルとして大きな反響を得た。マツダにこれ以上の差をつけられてはたまらないという危機感も感じられる「意欲作」で、メルセデス級のスピード感で商品化に移せるならば、インプWRXの閉塞感を打破して、ラリー→ラグジュアリーへのイメージ転換を実現できるだろう。
↓導入されたハイブリッドをスポーツモデルへと転用できるのか?