BMWが3シリーズをFRで作る唯一の理由はM3とアルピナB3だ。同様にメルセデスがセダンとしてはC63AMGのみに6.2LのV8NAという極上エンジンを載せているのもDセグがスポーツセダンとしての理想的なサイズだからと言える。日産もフーガではなくスカイラインをベースにGT-Rを開発している。M3(アルピナB3)、C63AMG、GT-Rといった過激なスーパースポーツセダンが過渡期を迎える中、その閉塞感を打ち破るかのように登場したのがインフィニティQ50。
このクルマの最大のポイントは日産がAWDの新たな扉を開くのでは?という期待でしょうか。AWDのセダン。アウディやスバルのセダンがセールス的に大きく成功を収めているというわけではないけど、AWDの走行安定性は今後の高速クルーズサルーンにとっては重要なファクターになりつつある。ただAWDには大きな弱点が2つある。燃費が悪い事と曲らないことだ。
セダン不人気の原因は大排気量モデルの燃費が極めて悪いからだ。ミニバンやコンパクトカーにV8エンジンを積むクルマなんて無いのだから、セダンやSUVは燃費が悪いイメージがどうしてもつきまとう。トヨタのGRや日産のVQといったV6エンジンは、高出力な点は評価できるけど、環境性能に関してはもはや完全に過去の存在に感じてしまう。どちらも先代の直6ターボエンジンが歴史的名機だったこともあり、ファンの間でもこの2つのV6はあまり評判がよくなかったりする。
燃費に神経質な日本ではもはやこのV6はガソリン喰いのロータリーエンジンのような扱い。トヨタも日産もアメリカ向けのエンジンと割り切って生産している。これを搭載したままAWDとなると街中では5km/Lの世界だ。高出力で安定していて申し分ない全天候型サルーンになるのは認めるけど・・・。
ホンダの先代レジェンドはまさにV6&AWDの高性能サルーンだった。気筒休止などの先端機能で可能な限り燃費を改善し、さらに旋回性能を向上させるために、ハンドルの角度に応じて左右前後の駆動輪の回転を個々に調整するSH-AWDを搭載した。今年登場する新型レジェンドではこのコンセプトをさらにハイブリッドを使って大きく前進させるのだとか。後輪はモーターなので瞬時の駆動制御に適しているのだそうだ。
レクサスGSのように欧州車的な高級サルーンを何のひねりもなく追っかけるクルマ作りと比べると、ホンダの考える高級サルーンはまだ世界に無い新しいクルマであることを貪欲に追求している。ただ残念なことにフラッグシップサルーンで最新技術を披露しても、たくさんは売れないのですぐには素晴らしさは広まらないのだけど・・・。
そんなホンダの思惑を見透かしたかのように、日産が横槍を入れて手柄を横取りしようとしている。レジェンドよりも安く、そしてAWDに高出力ハイブリッドを組み合わせるコンセプトは共通で、素早い操舵を可能にするためにステアバイワイアという新機能を搭載したインフィニティQ50が先に登場する。このクルマの価値はレガシィやアウディA4が築いたAWDサルーンの地位をさらに大きく高めることになりそうだ。
さらに高性能モデルのインフィニティQ50Sも完成している。さらにコストをかければPHVにも対応するだろうし、日産得意の4WSを組み込めばホンダが意図している構想を簡単にパクることもできるだろう。レクサス、メルセデス、BMW、アウディといったプレミアムブランドはあまりに無策だ。トヨタやVWの開発費は大衆車に多く注ぎ込まれているし(日産も同じだけど)、メルセデスやBMWは利益を上げ過ぎだ(開発費を掛けていない)。おそらくレジェンドやインフィニティQ50の良さをわかって買う人なんてほとんどいないとタカをくくっているのだろう・・・。